Books:森の音を聴く『羊と鋼の森』宮下奈緒

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ブックレビュー2019年1月:『羊と鋼の森』宮下奈緒

ブックレビュー1冊目は、静かな森を分け入っていくような、風のざわめきや木漏れ日と共に歩いていくような、やさしさと静けさに満ちた作品をお薦めします。

冒頭から、主人公の感受性の強さに感銘を受けました。いやこんな高校生いない!と思いつつ、彼の存在そのものが小さな宝物のよう。不器用な青年が調律師という仕事と出会い、人と出会い、音と出会い、世界の美しさを知る。ぼんやりしていた世界の輪郭を音で分け、名前をつけ、そして音を重ねていく。

美しいということがどんなことなのか、美しいということばを知ることで、世界とよりつながっていく。そういうことに静かに感動している主人公に、周囲の人間も少しずつ感化されていくよう。

彼は無欲で貪欲。特別な才能は持たないけれど、心を揺さぶられるひとつひとつを大事にしていて、あきらめることができない。そういう人が最後は一番遠くまで行けるのかもしれない。

ドラマチックな展開はないけれど、読んでいて心洗われるような優しい物語でした。

 

『羊と鋼の森』宮下奈緒に関する情報と所感

2016年本屋大賞受賞作品。2018年に文庫化および映画化されています。本屋大賞は書店員による投票制の賞で、好みが平均化されて、とがった作品は受賞しづらいですが、その分だいたいの人が読んでも面白いですね。

宮下さんの本は初読み。読んでいて小川洋子を思い出しました。もっとライトで、物語性より内面を大切に書かれている印象。あと、ほんとに優しい。

冬の夜に読むには最適な一冊。主旋律で聴かせるのではなく、美しい和音がずっとベースに響いているような作品でした。

 

縦横無尽に勝手に関連本おススメ

『小指の標本』小川洋子

小川洋子の作品のなかで一番好き。エロじゃないのにちょっとエロい感じで、フェティシズムを感じさせるのですが、とても美しい小説だと思います。自分だけが”それ”を見つけ、美しいと思ってしまう。「羊と鋼の森」とは全然違う作品ではありますが、ひたすら”音という名の美しさ”を追い求めていく主人公に、なんだか思い出してしまいました

『冬の犬』アリステア・マクラウド

冬が来るたび読みたくなる短編集。スコットランドからカナダへの移民である著者の自伝的小説。厳しく、静かな島の暮らし。ただ生きることがなぜこんなに胸に迫るのだろうと思う。これは本当に”珠玉”という言葉がぴったりの一冊です。

 

購入場所:近所のブックファースト

近所なので店舗名は伏せておきます。ブックファーストは大きめですが、あまりマニアックさはないかな。エンターティメント系に強い印象で、雑貨なども置いていたりしますが、うちの近所の書店はわりと普通です。なんだかんだと使いやすい書店なので、結局ほとんどここで買っています。

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Posted by しののめ